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櫻の花が咲く季節、ひとりの老いた女性が警察に保護された。
身元不明のその女性には、どうしても行きたい場所があるという。
「ソメイヨシノは60年咲くことができない——?」
そんな噂の真偽を確かめるべく、老人ホームを抜け出してきた女性と、
彼女を案内することになってしまった青年。
これは春の日に永遠とは何かを問う、ささやかなお話。
オリジナル・パンフレット
監督インタビューより一部掲載
本作は監督の長編デビュー映画『燦燦―さんさん―』でヒロインを務めた吉行和子さんが再び主演されています。『春なれや』というタイトルを含め、作品の成り立ちを教えてください。
「前作の御縁から吉行さんと交流を続けさせていただく中で、また一緒に撮影したいですねと話していたんです。その約束を実現する形で製作しました。『春なれや』とは松尾芭蕉の句に出てくる言葉です。吉行さんは俳句を詠まれる方ですし、短い時間で永遠を語るという意味で短編と俳句の長所を重ねたような作品を目指しましょうとお伝えしました。吉行さんは短編映画そのものが初出演でしたが、直ぐにその意味合いを理解してくださいました。私が語るまでもなく、すばらしい稀代の女優です。この作品で共演した若手にとっても非常にいい経験になったと思います。普段役者さんは、自分の出番じゃない時は現場から一定の距離を保って待機するものなのですが、今回は若いキャストが多かったので、吉行さんの芝居を間近で見ることを薦めていました。最前席で見て欲しかった」
興味深いエピソードですね。世の中に桜の物語は数多くありますが今回はまた新しい形の作品となったように思います。物語の発想はどこから浮かんできたのでしょう?
「漠然と吉行さんに《桜のお花見をしていただきたいなぁ》と思っていました。桜を調べていくうちにソメイヨシノは60年経つと咲くことができないという説を知り、物語になりそうだなと思いました。せっかくですから希望の物語にしたくて。ただし、これは『わさび』にも言えるのですが、いまさら嘘の希望なんていらないわけです。嘘っていうか分かりやすい希望のことですね。希望を見出すことが同時に人生の哀しみや深い味わいに通じるような作品にしたかったです」
撮影場所は熊本県菊池市を中心に行われています。ロケ地との出会いを教えてください。
「日本全国の桜の美しい場所を探し求めていたのですが、ようやく辿りついたのが菊池市でした。菊池市は日本一の桜の街を目指して活動されていて“万本桜”と称されているソメイヨシノの名所があります。本当に美しい街で、『春なれや』『わさび』の音楽プロデューサーの亀井登志夫さん、知永子さん御夫妻が菊池市の江頭実市長と面識がありご紹介くださいました。点が線になったように思えて、嬉しくて直ぐにロケーション・ハンティングに出掛けたのですが、行ってみて私はとんでもないことに気づいてしまったんですよ……(汗)」
公式パンフレット・ロングインタビューに続く・・・
「わさび」「春なれや」Official Site / © 外山文治